つまらない人生が楽しくなる?小説『砂の女』に学ぶ生きるヒントについて紹介!
つまらない人生を過ごしていませんか?
現状を変えようにも面倒で、現状維持のまま生きるという選択をとりがちです。
果たしてそれでいいのでしょうか。
その疑問を解消するヒントを得る道具があります。それは、
小説『砂の女』
です。
そこで、今回はつまらない人生を楽しくする『砂の女』に学ぶ生き方のヒントについて紹介します。
小説『砂の女』とは?
『砂の女』は、1962年に刊行された安部公房著作による小説です。
主人公の「男」が砂の世界へ昆虫採集に出かけますが、砂の穴に誘い込まれて帰って来れなくなります。
そこからどう生きようとするのか、「男」がアレコレ思慮深く考えながら生きる物語です。
適応の哲学
一言で言えば、適応の哲学です。
安部公房は次のように述べています。
たしかに、砂は、生存には適していない。しかし、定着が、生存にとって、絶対不可欠なものかどうか。定着に固執しようとするからこそ、あのいとわしい競争もはじまるのではなかろうか? もし、定着をやめて、砂の流動に身をまかせてしまえば、もはや競争もありえないはずである。現に、沙漠にも花が咲き、虫やけものが住んでいる。強い適応能力を利用して、競争圏外にのがれた生き物たちだ。
※引用元:『砂の女』(安部公房・著)16頁より
この引用から、
「安定ばかりが人生ではない。不安定でも流れを読んで動いていれば、十分生きていけるのだ。」
というメッセージが伝わるのではないでしょうか。大手企業の社員や公務員以外の道を考える人、あるいは不慣れな環境で悩む人にとって勇気づけられる内容です。
「沙漠でも咲く花」をご存知ですか?
“砂漠の薔薇” と呼ばれる「アデニウム」という花が実在しますが、不思議なイメージですよね。
この点は人間にも参考になり、生存の厳しいところでも適応すれば生存できるという可能性を見出す材料になるのです。
ちなみに、『砂の女』から次の2つのテーマが読者に問われています。
テーマ1:得体の知れない世界でどう生きるか
もしあなたが得体の知れない世界に迷い込んだとしたら、どうしますか?
「脱出への努力」
あるいは
「適応への努力」
のどちらかに分かれるでしょうが、どちらが正解かはわかりません。それが読者に問われています。
テーマ2:どの現実を選択するのか
「男」が次のようにブツブツ語る場面があります。
こうして、砂と昆虫にひかれてやって来たのも、結局はそうした義務のわずらわしさと無為から、ほんのいっとき逃れるためにほかならなかったのだから
※引用元:『砂の女』(安部公房・著)41頁より
「そうした義務」とは、砂の世界に来る前に抱えていた「男」の事情(仕事や人間関係など)のことです。この現実を仮に「現実1」と呼ぶことにします。
「男」は「現実1」から一時的に逃避するために砂の世界へやってきたのです。ですから、最終的に「現実1」に戻ることは必然です。
しかし、別の現実(砂の世界で生きる現実)が加わりました。その結果、次のように「現実1」を選ぶことを保留するのです。
べつに、あわてて逃げだしたりする必要はないのだ。いま、彼の手のなかの往復切符には、行先も、戻る場所も、本人の自由に書きこめる余白になって空いている。
※引用元:『砂の女』(安部公房・著)227頁より
砂の世界で生きる現実を「現実2」と呼ぶことにするとして、男は「現実2」を人生の選択肢に加えます。
そして、安部公房は「さて、どちらの現実を選ぶべきでしょうか?」と読者に問いかけているのです。
小説『砂の女』に学ぶ生き方のヒントとは?
テーマが分かれば、生き方のヒントもある程度見えてくるのではないでしょうか。
具体的には次の点が考えられます。
生きがいを見つけることの重要性
「男」は生きがいを見つけたことにより、脱出を保留するようになります。
偶然思いついた「溜水装置の開発」が毎日の楽しみになり、「元の世界よりも居心地がいいかも」と思うようになるのです。
この点は私たちにも学ぶことができます。
例えば、「毎日会社が楽しくない。辞めたい」と思っている状況で活用できます。
「仕事以外の楽しみの時間」を生きがいにするという方法です。
むしろ、それがないと「仕事の奴隷」か「お金の奴隷」の人生でしかなく、虚しくなってきます。
生きがいを見つけること。これは人生において重要です。
複数の現実を比較する重要性
『砂の女』の男は「現実2」を選びましたが、なぜ「現実1」に戻ることを保留したのか。
その理由には、
どちらの現実も仕事や人間関係のわずらわしさがある点で似たようなものであり、新たな楽しみの持てる「現実2」の方に魅力を感じたこと
にあるものと考えられます。
あなたの生きる現実ではいかがでしょうか。
例えば、会社を辞めたいと思ったときには「辞めない現実」と「辞めた後の現実」の2つの選択肢が存在します。
どちらに魅力がありますか?
『砂の女』の「男」のように魅力を感じた方を選ぶのもいいですし、あるいは我慢を美徳とする生き方を選ぶのもアリでしょう。
このように、『砂の女』は複数の現実の存在に気づかせてくれるのです。
『砂の女』の「男」のように楽しみを見つけよう!
ここまでつまらない人生を楽しくする『砂の女』に学ぶ生き方のヒントについて紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
『砂の女』は適応の哲学です。
以上見てきましたように、『砂の女』を読むと
・生きがいを見つけることの重要性
・複数の現実を比較する重要性
について気づくことができます。
それらが厳しい現実に適応できるヒントになるのではないでしょうか。