成功者の報道記事「小学校の作文で夢を書いていた」の活かし方とは?
あなたは本やネットの記事で次の内容をたまに見かけませんか?
「プロのスポーツ選手は夢を小学校の作文に書いていた」
これを読むと多くの人が次のような印象を受けるものです。
「小学校の作文で夢を書けば成功者になれる」
しかし、この論理には違和感がありますよね。
ということは、記事の読み方が間違っているので記事から知恵を身につけることができません。
そこで、今回は成功者の報道記事「小学校の作文で夢を書いていた」の活かし方について紹介します。
「成功者は夢を小学校の作文に書いた」旨の記事の重要な点とは?
「成功者は夢を小学校の作文に書いた」旨の記事の例として、次のものがあります。
フィギュアスケートの紀平梨花選手について取り上げられている例です。
小学6年生の時に書かれた「卒業文集」を入手。本人の了承のもと、記された衝撃的な“未来予想図”を初公開だ。
(中略)
「たくさんのトップスケーターを近くで見て、また私は大きく成長した。将来、私はその場所で花束をたくさんもらえる選手になる。」
(中略)
特筆すべきは夢を語る文末表現の方法だ。紀平は「○○したい」「○○になりたい」という願望ではなく、「○○する」「○○になる」と断定調でつづっている。マリナーズのイチロー外野手(45)も小学校の作文で「必ずプロ野球選手になれると思います」と自信あふれる書き方をしており、サッカーの本田圭佑(32=メルボルン・ビクトリー)も「ぼくは大人になったら世界一のサッカー選手になりたい、と言うよりなる」と独特の表現で夢を書いている。
いずれも「絶対になる」という強い意志の表れ。この信念こそが、成功への源と言える。
※引用元:2018年12月16日付け東スポWeb記事「紀平梨花が小学校卒業文集に書いていた「予言集」独占入手 強さの「答え」を発見」より
この記事はどんな点が重要だと思いますか?
重要な点がわかれば、この記事を活かすことができます。
考えられるのは次の点です。
(1) 「活動が現在進行形である」という前提
まず、「活動が現在進行形である」という前提です。なぜなら、現在活動中のことでなければ説得力がないからです。
紀平梨花選手に限らず、イチロー選手や本田圭佑選手も夢を書いた当時には現在進行形で行っていた活動があったはずです。
もし現在活動中でもないのに「私は〇〇になる」と言っている人がいるとしたら、テレビの影響を受けやすい幼稚園児ぐらいのものでしょう。幼稚園児ならば「ウルトラマンになる」「お母さんになる」という子もいますよね。
(2) 努力から得られた確かな感触
上記の記事には「強い意志の表れ」とありますが、これは「努力から得られた確かな感触」により生じたものです。
紀平梨花選手らは幼い頃から活動を続けていて、練習や大会での成功経験を通じて確かな感触を得ていたのだと思われます。
あなたにも成功体験はありませんか?
・運動会のリレーで優勝した
・おいしい料理ができた
・テストで高得点だった
など。どんなに小さくても成功体験があれば、そこから「確かな感触」が得られ、
「もしかしたら、この道でプロになれるかも!?」
と思うこともあるはずです。上記の記事で「信念こそ成功への源」とありますが、信念の発生源こそが小さな成功体験の積み重ねと考えられます。
なぜ「小学校の作文で夢を書けば叶う」と誤解するのか?
ここで「小学校の作文で夢を書けば叶う」と誤解する原因について触れておきます。
錯誤相関による錯覚
まず、「錯誤相関」が主な原因として挙げられます。
「錯誤相関」とは、関連性のない事柄同士を少ないデータで関連付けることを言います。
上記の記事の場合で言えば、
・イチロー選手が小学校の作文で夢を書いた
・本田圭佑選手が小学校の作文で夢を書いた
・紀平梨花選手が小学校の作文で夢を書いた
ゆえに、
「一流の選手は小学校の作文で夢を書いた」
と関連付けることです。そこで、
「それ以外の一流の選手はどうなのか?」
というツッコミを入れると、上記の記事投稿者は返答に困るでしょう。
ですから、上記の記事は論理的な内容とは言えませんが、読み取った後の認識としては「一流選手の中には小学校のときから夢を持っていた」という程度で良いのです。
「逆も真なり」という論理の錯覚
次に、「逆も真なり」という論理の錯覚を起こすのも誤解の原因の一つと言えます。
「紀平梨花選手らは夢を小学校の作文に書いていた。」という論理の逆は次のようになります。
「小学校の作文に夢を書いていた人は紀平梨花選手らだ。」
明らかにおかしいですよね。小学校の作文に夢を書いていた人は紀平梨花選手ら以外にも山ほどいるはずです。
しかし、実際に記事を読んでいると無意識に「逆の論理も真である」という錯覚を起こし、
「小学校の作文で夢を書けば成功者になれる」
と勘違いしやすいのです。
誤解しないためには「逆も真なりとは必ずしも言えない」点に注意しておくことが必要です。
錯覚に気づかないと「確証バイアス」に陥る
「逆も真なりとは必ずしも言えない」点に気づかないと「小学校の作文で夢を書く=成功法則」ということを信じるようになります。
その後に再度同じような記事を見かけると「やっぱりそうなんだ」と認識を強化し、最終的には「神様がいる」「幽霊がいる」と信じる信者と同レベルになります。
これを「確証バイアス」と言います。
※確証バイアスの詳細については、別の記事「自分を変えたいと思ったときに使える道具」で紹介しております。
ですから、「AはBである」という論理が正しくても「BはAである」という論理は必ずしも成立するとは限らない点について認識しておく必要があります。
記事から知恵を得て実際に活かしてみよう!
ここまで成功者の報道記事「小学校の作文で夢を書いていた」の活かし方について紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
上記のスポーツ記事にあった「強い意志の表れ」や「信念」には、少なくとも
・「活動が現在進行形である」という前提
・努力から得られた確かな感触
の2点は不可欠な要素として含まれています。
つまり、「強い意志の表れ」や「信念」は結果的に生じたものであり、それを支える経験や活動が成功の源となっていると言えます。
本やネットの記事を読む際には、そこまで自分なりに読み取らないと知恵が身につきません。「さすが、成功者はやることが違う」と納得して済ませてしまいます。
これからは記事を読んで得た知恵をフルに活かすために、今回の記事を参考にしてみてください。