「わかったつもり」で終わらせない情報や知識の活用の仕方とは?
あなたは、テレビやインターネットなどで得た情報をどのように活用していますか?
例えば、「ロシアW杯で日本がベスト16だった」という情報を得たとします。
この情報をどのように活用できるでしょうか。
もし、この情報をそのまま誰かに話した場合、
「だから何?」と言われるのがオチ
です。なぜなら、それには“あること”が足りないからです。
その“あること”とは、
「情報の咀嚼(そしゃく)」
です。「情報の咀嚼」が足りないと、
・会話が続かない
・頭が悪くなる(思考停止の癖が身に付く)
・論文で評価されない
などのデメリットにつながり、仕事や勉強、家庭生活などのあらゆる生活の場面で支障を来たします。
そこで、そうならないために、今回は「情報の咀嚼」の方法について紹介します。
「情報の咀嚼」とは?
「咀嚼」の意味が「食べ物をよく噛んで飲み込みやすいようにする」というものでありますので、「情報の咀嚼」とは「情報を吟味して活用しやすいようにする」ことを意味します。
冒頭で取り上げた例の「ロシアW杯で日本がベスト16だった」という情報は、食べ物に喩えれば「食する前の食べ物そのもの」です。
これを具体的な食べ物に置き換えて「リンゴ」だとして、そのまま噛まずに飲み込んでしまうといかがでしょう。消化不良を起こして大変なことになりますよね。消化不良になれば胃腸にも届かず、全く栄養吸収できません。
情報も同じで、メディアで得た情報をそのまま活用すると、あなたの頭の中には何も残りません。
ですから、メディアで得た情報を活用するには、あなたの頭の中で整理する(咀嚼する)必要があるのです。
「情報の咀嚼」の方法とは?
「情報の咀嚼」を一言で言えば「探る作業」でありますが、「探る作業」には次の二つが考えられます。
(1) 経緯を探る
まず、「なぜそうなったのか?」という経緯を把握することが重要です。
これには、
・原因
・過去の流れ
の2つのポイントが必要不可欠です。
上記の「ロシアW杯で日本がベスト16だった」例で考えてみましょう。何を考えるかというと、「なぜ日本はベスト16だったのか?」ということです。
例えば、次のような流れを把握することが重要です。
このように図の最下を「ロシアW杯で日本がベスト16」にしたフローチャートを作り、最下の前には「どういう経緯があったのか?」ということについて関連性のある事柄を調べ上げ、「↓(矢印)」の逆向き(過去の方向)に遡りながら経緯を探っていくことが望ましいです。
「過去の方向に遡りながら経緯を探っていく」とは、
・「日本がベスト16なのは、決勝トーナメント1回戦で敗退したから」
・「決勝トーナメント1回戦に出場できたのはグループリーグを突破したから」
などのように「事実とそれに直接結びつく過去の事実」を探す作業のことです。
(2) 今後の見込みを探る
次に「その後、どうなるか?」という今後の見込みを把握することが重要です。
ここでのポイントは、
・改善すべき点
・改善後の見込み
の2つが必要不可欠です。
上記の「ロシアW杯で日本がベスト16だった」例で言えば、
改善すべき点 | ・監督と選手との間でのコミュニケーションが十分にとれること ・選手強化 ・戦術の幅の拡大 |
改善後の見込み | ・ベスト8以上も夢ではない |
と言えますので、次のとおりにまとめることができます。
「今後、日本は監督と選手との間でコミュニケーションが十分にとれることを前提に選手強化や戦術の幅の拡大を図っていけば、ベスト8以上も夢ではないだろう」
ここまで「情報の咀嚼」ができれば、コミュニケーションや思考能力の向上につながっていくのではないでしょうか。
根本思想:細野真宏の「数学的思考力」
この道具は、経済解説者・細野真宏氏の提唱する「数学的思考力」という考え方を根本思想としています。
細野真宏氏は『経済のニュースがよくわかる本』や『数学が本当によくわかる本』などベストセラーの本を多く出版し、経済や数学について子どもにも理解できるような解説で定評があります。
細野真宏氏は著書『細野真宏の数学嫌いでも数学的思考力が飛躍的に身に付く本!』の中で、「数学的思考力」について次のように紹介しています。
「数学的思考力」とは、「物事の仕組みを一つひとつ整理して考えることができる能力」のことです。(中略)簡単なイメージとしては、「情報をフローチャートにまとめることができる能力」と言うこともできます。
※引用元:『細野真宏の数学嫌いでも数学的思考力が飛躍的に身に付く本!』(細野真宏・著)29~30頁
「フローチャートにまとめること」は便利なツールであり、それまで理解できていなかった点と理解した点がつながり、脳をスッキリさせることができます。
そのため、細野真宏氏の提唱する、
「数学的思考力」は「脳をスッキリさせる道具」
とも言えます。
「数学的思考力」が必要な理由とは?
「なぜ「数学的思考力」が必要なのか?」ということについて細野真宏氏は次のように述べています。
“分かったつもり”から抜け出すには、「分かる」と「伝えられる」を同じにする必要があり、そのために「数学的思考力」と「思考の歩幅」の理解が必要不可欠。
※引用元:『細野真宏の数学嫌いでも数学的思考力が飛躍的に身に付く本!』(細野真宏・著)58頁
確かに、私たちは往々にして“分かったつもり”でいることが多いものです。
“分かったつもり”とは、
・文章の意味を理解した
・知識と知識の関係を理解した
の段階に留まっている状況と言えます。例えば、次のようなことです。
・「適度な運動をすることは健康にいい」とわかっているのに、それをしない
・「タバコを吸うのは健康に良くない」とわかっているのに、タバコを吸う
このような「わかっているのに、行動が伴わない」という矛盾状態は私たちによくあることでありますが、細野真宏氏は、そのような矛盾状態から抜け出すために「数学的思考力」が必要だと提唱されています。
「「分かる」と「伝えられる」を同じにする」とは?
上記の引用で細野真宏氏は「「分かる」と「伝えられる」を同じにする」と述べていますが、これは他人に伝わった段階に至って初めて「分かる」と言えるということです。
自分の中では分かっていても、他人に説明するとなると伝わらないということはよくありますよね。
しかし、相手に伝わらないのは自分が分かっていない証拠でもあると言えます。
例えば、「1が5になるでしょう?」と言われると意味不明ですが、「1に4を足せば5になるでしょう?」と言われると伝わりますよね。
この例で言えば、説明する人は「なぜ1が5になるか」という点について「確認しておかないと相手に伝わらない」と気づくことが重要です。
気づくためには、誰かに説明してみることが必要です。もし説明相手がいなければ、
・自分あてにメールを打つ
・ブログを作る
・独り言をつぶやく
などの方法がオススメです!
「思考の歩幅」とは?
また、上記の引用の中で細野真宏氏が「思考の歩幅」と述べていますが、これは「理解1→理解2→理解3→・・・」というような理解の進む段階のことを言います。
なお、理解の早い人は「理解1→理解5」という段階飛ばしができます。
しかし、理解の早い人には大きな弱点があります。それは、他人への説明においても段階飛ばしをしてしまいがちな点です。
例えば、「ミュータンス菌がプラークの中で酸を発生させるから虫歯になるのです」と言われてみるといかがでしょう?
「???」と思いますよね。ミュータンス菌やプラーク、酸と虫歯の関係などを説明する段階を飛ばしているので、このような説明では一般的には理解が得られないのです。
そのため、他人への説明においては説明相手の「理解1→理解2→理解3→・・・」という理解の進む段階を意識する必要があります。
細野真宏氏は、この「思考の歩幅」も“分かったつもり”から抜け出すために必要だと述べています。段階飛ばしする癖が身に付くと早合点するリスクが伴いますので、そのことについて認識しておくことが望ましいでしょう。
得た情報を色々調べて伝えられる達人になろう!
ここまで「情報の咀嚼」の方法について紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
テレビやインターネットなどで得た情報は「咀嚼してこそ有意義である」ということについてご理解いただけたでしょう。
「情報の咀嚼」の方法は、
(1) 経緯を探る
(2) 今後の見込みを探る
の2つにあることを紹介しました。つまり、「情報の咀嚼」は「過去と未来について探る作業」と言えます。
このことから、
現在入手した情報は、過去と未来をつなげる役割がある
というイメージを描けるのではないでしょうか。
私たちは常に未来に向かって生き続けるために、現在の情報をもとに過去と未来を上手につなげていかなければなりません。
今後は、テレビやインターネットなどで情報を得たら「情報の咀嚼」を行って、より多くの人と楽しくコミュニケーションをとれるように心がけていきましょう!